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NHK的な番組の喪失を懸念

 NHKに関する批判は今に始まったわけではありません。その象徴的な批判の矛先は「受信料」であることは間違いありません。他にも国営放送と言われている(揶揄されている)ことより時の政権寄りのスタンス、お堅い番組編成、膨大な制作費、経営手法等々あるかと思いますが、やはり受信機を所有している家庭には等しく受信料を取り立てる、というところが一番批判が集まるところでしょう。

 

 一方、民放各社においては、広告費や事業収入によって成り立っていることより、それに対する視聴者の金銭的な負担はありません。ただし、視聴者は番組のスポンサー、放送中の広告を、常に見ることを求められます。歌番組なら1曲聴いて次の歌手が登場という盛り上がりの最中であってもCMは必ず入ります。スポーツ中継の場合は、野球なら回の変わり目のタイミングでCMですが、そういう区切りのない種目の場合は、CMの放送中に形勢が逆転することがよくあります。映画なら、放送局側の編集者が適当な間合いを見つけてCMを入れていきます、ので物語のシーン・登場人物の心の移り変わり等々の流れが常に商品の宣伝を主旨とした映像挿入によって中断されるという宿命にあります(映画のような一連の流れの作品は民放での放送には不向きであり、レンタルで観るのがベストです)。が、民間放送局であるなら、仕方ないことかもしれません。

 

 そして民放の番組制作の大きな特徴は、CMをいかに多くの人々に見てもらえるようなコンテンツを作るか、という点に比重がかかります。もちろん良質な番組を制作し視聴率も取れるならそれに越したことはありません。しかし残念ながら視聴率が取れる番組は、時代の風潮・流行・人気タレントの有無等々に左右されます。下品な内容、教育関係者が眉をひそめるもの、俗な話題でも、人々が食いついてくれれば(視聴率が上がれば)、放送局とスポンサーの思惑が一致するということも多々あるわけです。

 

 ところでNHKを批判し、改革・解体・受信料廃止せよ、という意見の先には「NHKも民放のようにCMを入れて番組を作ったらいい」という論に行きつくかと思われます。確かにNHKの人気番組「チコちゃんに叱られる」や「ブラタモリ」「鶴瓶の家族に乾杯」「朝ドラ」「大河ドラマ」等々、民放のようにCMが入ったところで、一定の視聴率は取れる番組はあるように思われます(制作費にどれだけ広告収入を反映させられるかは別として)。「ブラタモリ」などは、だらだらと歩き回り解説者が常に道先案内して・・・という流れを、CM(例えば当該地域の特産商品とかその地域の旅館・ホテルのCM)を入れて、番組構成を仕切り直し、アクセントにしてみれば、案外面白いのでは、などと思ってしまいます。

 

 しかし、しかし、ここからです。

 

 NHKの番組は、そのような人気番組ばかりではありません。教育テレビ(Eテレ)などの学校の授業を補完するよな番組、幼児向け、趣味・教養・実用の番組、BSでの「世界ふれあい街歩き」「駅ピアノ」「ぐるっと一周イギリスの旅」「日本アルプス空中散歩」「国宝の旅」等々、私が最も好んで観る番組(これらを総称して「NHK的な番組」と言ってもよいかもしれません)。それらは各々の番組制作コンセプトに従って、手慣れた演出家・カメラマン・編集者による良質な番組に仕上がっています。しかしこれらは、内容的に良いものであっても、視聴率を取れるものとは限りません。ではCM収入に頼って視聴率を取れるようにするためにはどうすればよいのか。行き着くところ、教育番組であっても、進行役に人気お笑い芸人を起用するとか、旅番組も現在のように渋めの俳優を使わず、今トレンドなアイドル歌手を出演させる、等々に流れていくこととなるでしょう。つまり、すべての番組が民放のようなバラエティ番組になってしまいます。予定調和な演出、おバカタレントの盛り上げ、その場だけの笑い、何も残らない虚無感が残る番組になってしまいます(たぶん)。

 

 受信料という、ある意味、色のついていない収入があることによって、民放のように広告主に慮(おもんばか)る番組制作をしなくてよく、広く多くの人々(場合により一定程度の必要者)を満足させるような良質な番組制作が可能となるのだと思います。

 

 しかし番組内容の精査や経営改革・刷新は常に行われなくてはなりません。それも馴れ合い的なものでなく、外部からの客観的な視点が必要です。

 

 受信料を無くせ、から「NHK的な番組」の喪失につながるのは惜しいと思い、少しそんなところを書いてみました。ので、別にNHKという会社を擁護したり礼賛しているわけではなく(ちょっとしてますが)民放化による番組の低俗化(予測)を危惧している、というところです。

 

 

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